人間ほど,視界の周辺に意識を配らない動物はないという。他の動物であれば,敵への警戒心から視界の隅に動いたものでも的確に認識するのに対して,人間は目の前ばかりを見ている。そして視界はどんどん狭くなっていく。だが,視界を広げることもできる。どんどんと拡張する視界。それは,人間を他の動物よりも優位に立たせるかもしれない。
IBM社は14日,量産前の高解像度液晶ディスプレイを展示した。この液晶ディスプレイは,22インチで900万画素,3840 x 2400ドット(QUXGA-wide)を表示する。この高解像度ディスプレイは世界に2台しかないそうで,あまりの高精細さに,ディスプレイモニターに映し出されたものが紙のように見える。
視界が広いこと,多くのことを一目で見渡せることは,生きるうえで有用なことだ。だが,3840 x 2400ドットという解像度は,見てみないことには想像がつかない。ちなみに,今ご覧いただいているこのウェブページは,横幅600ピクセル(ドット)となっている。←から→の紺色の部分が600ピクセルだから,この幅の5倍以上を表示能力として持つ22インチモニターとなる。人間の160度の視界よりも,広そうぢゃないか?
いつの日かモニターは,人間の前に鎮座するものから,人間の周囲を取り囲むものへと変わる。360度,取り囲んで,人間のもうひとつの視界を形作る。1024 x 768あたりが大勢を占める現状は,まだその中に見ているものを別世界にしか映さないが,人間の視界の範囲を超えたとき,そこはひとつの世界となる。一度広がった視界に対して,相変わらず狭い視界しか提供できないリアルは,限りなくつまらないものとなる。視界を広く持て。それが,未来を有意義に過ごすための,メッセージだ。
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